感謝力 ~会う人の印象を180度変える魔法~

1990年代の半ばに4年弱、私はウィーンに駐在していました。
ウィーンは観光都市ですので、業務出張以外に、プライヴェートな旅行で事務所を訪れて来る訪問客が沢山いました。
会社関係の人自身及び家族が旅行で来る場合のみならず、その友人、知人がウィーンに来る場合の世話を頼まれることも多く有りました。

ウィーン夜景.jpg

私は基本的に来客が好きな方ですので、頼まれれば喜んでお世話をしておりました。
希望に応じて、ホテルやレストランの予約、オペラやコンサートのチケットの立替購入などを行いました。
訪問客がチケットを受け取りに事務所に来る時に在席していれば、そこでご挨拶と歓談のひと時を持つことも有りますし、都合が合えば、会食をすることも有りました。

或る時、元上司の夫人の友人のお嬢さん(Aさん)がウィーンに来る時の世話を頼まれました。
しばらくして、Aさんからウィーン訪問に際してのリクエスト事項を熱心に列記したFAXが届きました。
ホテル予約、オペラやコンサートのチケット、地方都市に移動するための列車のチケット手配などを含む、結構込み入った内容でした。
私は快諾し、アレンジが整った旨を連絡する際に、Aさんがウィーンを訪問する時期に、私が事務所に在席している予定の時間帯も伝えました。

Aさんがそろそろ来る頃かと思って秘書に尋ねると、既にその日の朝早く、Aさんは事務所にチケットを受け取りに来たとのこと。
AさんのFAXの文面から見て、私の在席中に挨拶に来られるだろうと思っていたので、意外な気がしました。

偶々、私は、Aさんが観る予定のオペラを、他のお客のアテンドで観ることになっていました。
オペラハウスに着いて、開演前にAさんに挨拶しようと平土間を歩いていると、控えていた座席番号に、30才くらいの容姿の整った女性が座っているのが眼に入りました。
私は女性に近付いて、「服部ですが」と声を掛けました。
Aさんは私を見て一瞬、困ったような表情をし、直ぐにそれを上書きするような会釈を返しました。
私たちは二言三言話しましたが、Aさんの返事は気が乗らず、また、今回訪問に際して依頼した手配に関する感謝の言葉も有りませんでした。

私が好んで来客のお世話をするのは、お客にウィーンを楽しんで頂き、その喜びをシェアすることで、私も精神的な報酬が得られるからです。
しかし、Aさんの反応はそのような精神的報酬とはほど遠く、無料のコンシェルジェとして体よく利用されただけ、という苦い感情を覚えました。

また或る時、本社から事前に面識のない或る部門の課長(Bさん、男性)が出張でウィーンを訪れました。
余暇時間にBさんの観光案内をしたり、一緒に会食したりしましたが、実を言うと、Bさんの滞在中はそれほどの好印象を持ちませんでした。

帰国後しばらくして、Bさんから分厚い封書が届きました。
書面には、ウィーン滞在中の楽しかった想い出や感謝の気持が縷々と綴られており、私を撮影した写真やBさんと私が一緒に写った写真数枚が同封してありました。
それを読んで、私はとても温かく幸せな気持ちを感じました。
そして、Bさんがとても好ましく感じられ、Bさんの滞在中、もっと良くして上げれば良かった、という思いがしました。

神仏に祈る時には頼みごとをしてはいけない、ただ感謝しなさい、とよく言われます。
ウィーン駐在時代によく頼まれごとを受けていた立場からすると、その意味が良く分かります。
神様も仏様もきっと、感謝する人にはもっと何かして上げたい、と思うだろうし、頼みごとばかりで感謝の無い人にはもう何もして上げたくない、と思うだろうなあ、と思います。

カウンセリングルーム・メイウッド

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