ルリュールとカウンセラー ~本の修復、人生の修復~

いせひでこ作の『ルリュールおじさん』という絵本に出会いました。
「ルリュール(relieur)」とはフランス語で製本職人という意味です。

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或る朝、植物好きの女の子ソフィーが大切にしていた植物図鑑の製本が崩れてバラバラになってしまいました。
本屋さんには新しい植物図鑑がいっぱい売っていますが、ソフィーは自分が大切にしていた図鑑をどうしても直したいと思います。
それを見た雑誌売りのおばさんは「そんなにだいじな本なら、ルリュールのところに行ってごらん」と教えてくれました。

「ルリュールって、本のおいしゃさんみたいな人のこと?」と思いながら、ソフィーは街中を歩き回って探します。
そして、とうとう年取ったルリュールのおじさんを見つけました。

「こんなになるまで、よく読んだねえ。ようし、なんとかしてあげよう」とおじさんは修理を引き受けてくれました。
「では、まず一度本をばらばらにしよう、とじなおすために。
「ルリュール」ということばには「もう一度つなげる」という意味もあるんだよ。」

絵本では、ルリュールの仕事の工程が詳しく描かれます。
そして、一段落付いたおじさんとソフィーは公園に出かけ、樹齢400年以上もするアカシアの大木を見上げます。
「ルリュールもそのくらい前からつづいてきた仕事なんだよ。」

おじさんは父親からいつも「ぼうず、あの木のようにおおきくなれ」と言われて育ちました。
「本には大事な知識や物語や人生や歴史がいっぱいつまっている。
それらをわすれないように、未来にむかって伝えていくのがルリュールの仕事なんだ。」
「修復され、じょうぶに装丁されるたびに本は、またあたらしいいのちを生きる。」

おじさんはソフィーの本を新しい表紙で装丁し、「ARBRES de SOPHIE(ソフィーの木たち)」という題を付けてくれました。
おじさんの作ってくれた本は二度とこわれることはありませんでした。
そしてソフィーは植物学の研究者になりました。

私はこの絵本を読んで、ルリュールの仕事はカウンセリングと同じだ、と思いました。
「ルリュール(reliur)」の元となる動詞「ルリエ(relier)」には「もう一度つなげる」「結び直す」「まとめる」等の意味が有り、本質的に「全体性を取り戻す」ことに通じます。
初回のコラムの中で私は、カウンセリングを本来の意味でのhealing、すなわち「全体性(健康、health)を取り戻すこと」と位置付けている、と書きました。
つまり、ルリュールの仕事とカウンセラーの仕事は「全体性を取り戻す」点で共通しているのです。

一旦バラバラにされた本は、修復され、装丁され、新しい命を生きるようになります。
そして、その本を手にする人の人生に影響を与えます。

本には大事な知識や物語や人生や歴史がいっぱい詰まっています。
と言うことは、一人一人の人は心の中には固有の本を抱えて生きている、とも言えます。
カウンセラーという仕事はその人固有の本を修復するルリュールであると言えるかも知れません。

カウンセリングルーム・メイウッド

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