相対化して観る ~固定観念からの解放~

人は日常見ているものをそのまま当たり前のものと認識して生活しています。
見ているものをいちいち疑っていると疲れるし、時間も食うので、エネルギーを節約するために、こういうものを見たらこういう風に認識する、というルーチンを無意識のうちに作って生活しているのです。

例えば、千円札を見れば1,000円の価値が有ると認識し、一万円札を見れば10,000円の価値が有ると認識します。
自分だけでなく、皆がそのように認識するので、日本経済が混乱を起こさずに済んでいるのです。

かつて会社員だった私は1979年から80年に掛けて1年間ロンドンに駐在していました。
駐在先の事務所はロンドンに在ったのですが、担当地域はヨーロッパ全域だったので、毎週どこかに国外出張していました。
当時はユーロという統一通貨は有りませんので、出張先の国に着く度にその国の通貨に両替をしました。
フランスに行けばフランス・フラン、ドイツに行けばマルク、オランダに行けばギルダー、オーストリアに行けばシリング、チェコに行けばコルナ、ブルガリアに行けばレバ、という具合に。

頻繁に両替した色々な通貨の紙幣を見ると、まるでおもちゃの紙幣のように見えてしまいます。
けれども、店で差し出せばちゃんと物やサービスを購入することが出来ます。
そのような生活に慣れてから日本に帰国して日本円の紙幣を手にしたところ、それがまるでおもちゃの紙幣のように見えてしまったのです。
その時、「そうか、日本円も世界にいくつもある通貨のひとつに過ぎないのだ」と実感しました。

「日本円も数ある通貨のひとつ」という概念は誰でも頭では分かっているはずです。
ですが、日常生活で一万円札を見れば、何となくそこに一万円の重みを感じてしまうのではないでしょうか。
日本国内に暮らしていると、その価値をニュートラルな眼で見ることが難しいのです。
かつての私は、一旦日本国外に出て戻って来ることによって、初めて実感としてその価値を別の観方で観ることが出来ました。
そして、一万円札の呪力から自由になれました。

カウンセリングでも同じことが言えます。
大抵のクライエントはものの観方が固定的で行き詰まりを感じています。
別の観方が出来れば良いということは頭では分かっていても、自力で自分が身を置いている枠から出ることが出来ないのです。
そこでカウンセラーは適宜質問したり、ワークをしてもらったりして、クライエントが枠の外に出られるように援助します。
すると、クライエントの意識は知らず知らずのうちに枠の外に出ることが出来ます。

メンタルヘルスカウンセリングとは.jpg

そして、クライエントはいつの間にか自分を取り巻く状況を相対化して観る視点を獲得していることに気付きます。
その時点で、既にクライエントが周りの状況に感じていた重苦しさは相当軽減しています。
そして、具体的にどのように対処すれば良いのか、という糸口も見えて来ます。

次回はものごとを相対化して観るための有効な技法である箱庭療法についてお話ししたいと思います。

カウンセリングルーム・メイウッド



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